生成AIの業務利用が当たり前になるなかで、「自社に合うAI開発企業はどこか」「国産モデルと海外モデルはどう使い分ければいいのか」と悩む方が増えています。2026年に入り、政府の共通基盤で国産の大規模言語モデルが試験導入され、国内スタートアップの大型資金調達も続くなど、AI開発企業をめぐる動きはさらに活発になりました。ここでは、国内の注目企業7社の特徴と、開発を依頼するときの見極め方を整理します。
この記事のポイント
- 国産LLMは「日本語の強さ」と「国内での運用しやすさ」が評価され、官公庁や大企業で採用が進んでいる
- 2026年3月にデジタル庁が国産7モデルを選定し、政府共通基盤「源内」での試験利用が始まった
- スタートアップ側ではSakana AIが約200億円のシリーズBを調達し、国内資金調達ランキングで首位に
- AI開発企業は「モデルを作る会社」と「導入を支援する会社」に大きく分かれるため、目的に合わせた選び方が重要
- 依頼前は実績・運用体制・データの扱い・費用の内訳の4点を確認すると失敗しにくい
AI開発企業とはどんな会社か
ひとことで「AI開発企業」といっても、事業の中身は幅広く分かれています。読者の目的によって見るべき会社が変わるため、まず全体像をつかんでおきましょう。
大きく分けて3つのタイプがある
AI開発企業は、役割の違いから次の3タイプに整理できます。
- 基盤モデル開発型:大規模言語モデルや画像・音声モデルそのものを研究・開発する会社。国内ではNTT、NEC、富士通、ソフトバンク、Preferred Networks、Sakana AIなどが該当します。
- ソリューション提供型:既存のモデルや自社モデルを、企業向けのサービスや業務システムに仕立てて提供する会社。日本語特化のELYZAのように、モデル開発と提供の両方を行う会社もあります。
- 受託開発・導入支援型:企業の課題を聞き取り、PoC(概念実証)から本番運用まで伴走する会社。特定の業界に強いところや、データ基盤の整備まで担うところがあります。
ここが押さえどころ:「自社専用のモデルを作りたい」のか「既存のAIを業務に組み込みたい」のかで、相談すべき会社のタイプはまったく変わります。最初にこの違いを整理しておくと、比較がぐっと楽になります。
2026年のAI開発企業をめぐる最新動向
2026年は、AIが「試して使う」段階から「業務を任せる」段階へ進んだ年として語られています。国内の動きを4つの視点で見ていきます。
エージェント型AIの実用化が進んでいる
2026年9月ごろのニュースでは、建設現場での写真整理や現地調査の記録、店舗での口コミ返信やデータ分析など、AIエージェントに実務を任せる事例が広がっていると伝えられています。営業、自治体、流通といった分野でも、記録・照合・対話の自動化が進んでいます。AI開発企業に求められる役割も、単にモデルを提供するだけでなく、業務フローに組み込む設計力へと移っています。
政策面でも後押しが続いている
国内では2025年に施行された「AI推進法」に続き、2026年7月には「人工知能基本計画 第Ⅱ期」が閣議決定されたとされています。イノベーションを妨げにくい促進型の枠組みが維持されており、エージェント型AIの社会実装を進めやすい環境が整いつつあります。
ワンポイント:政策の方向性は、公共分野や大企業の発注動向に影響します。国産モデルを提供する会社にとっては追い風になっており、今後の採用事例が増えていく可能性があります。
国産LLMが公共分野で試験導入される
2026年3月、デジタル庁は政府共通の生成AI基盤「源内」で試験利用する国産LLM7モデルを選定しました。選ばれたのは、NTTグループのtsuzumi 2、KDDIとELYZAのLlama-3.1-ELYZA-JP-70B、ソフトバンクのSarashina2 mini、NECのcotomi v3、富士通のTakane 32B、Preferred NetworksのPLaMo 2.0 Prime、Customer CloudのCC Gov-LLMです。
スケジュールとしては、2026年5月から全府省庁規模での大規模な試行が始まり、8月からは国産LLMの試験利用が開始。評価結果は2027年1月に公表され、優れたモデルの実際の調達は2027年4月以降に始まる予定と伝えられています。
スタートアップへの資金流入も加速
2026年上半期の国内スタートアップ資金調達ランキングでは、Sakana AIが首位になったと報じられています。同社は約200億円のシリーズBを完了し、評価額は約26.5億ドルとされています。2026年1月にはGoogleからの戦略的な出資も発表され、Geminiの日本での普及に向けた連携も進んでいます。国内の金融機関や海外の投資家も参加しており、国産の基盤モデル開発が「実験」ではなく戦略的な投資対象として見られていることがうかがえます。
メモ:資金調達額や評価額は報道ベースの数字です。会社の実力を測る唯一の指標ではないため、導入検討時は提供実績と運用サポートもあわせて見るのがおすすめです。
注目の国産AI開発企業7社の特徴
ここからは、国内で存在感のある7社を、得意分野とあわせて紹介します。各社のモデル名や提供形態は更新されることがあるため、導入前には必ず公式情報で最新の内容を確認してください。
1. Sakana AI|自然に学ぶ発想の基盤モデル開発
東京拠点のSakana AIは、日本発の基盤モデル研究で世界的に注目されているスタートアップです。生物の進化や群れの知恵といった自然界の仕組みを取り入れた独自のアプローチで、日本語や日本の文化に合ったモデルの開発を進めています。金融機関との連携や大手投資家からの出資を受けており、国内の金融・公共分野での活用が期待されています。
- 強み:研究力の高さと、日本市場に向けたモデル開発の方針
- 向いている用途:先端的な研究連携、金融・公共分野での高度なAI活用
- 確認したい点:一般企業向けの提供形態や窓口は、公式発表で最新情報を確認
2. NTT|軽量で日本語に強いtsuzumi 2
NTTグループが開発するtsuzumiは、軽量ながら日本語の処理に強いことを特徴とするLLMです。tsuzumi 2は2025年10月に提供が始まり、法令や行政文書に多い複雑な言い回しの処理に強みがあるとされています。軽量モデルは少ない計算資源でも動かしやすく、自社環境での運用を考える企業にとって選びやすい選択肢です。
- 強み:日本語の表現力、軽量で運用しやすい設計
- 向いている用途:行政・法務文書の処理、社内システムへの組み込み
豆知識:軽量モデルは、応答速度やコスト面で有利になりやすい一方、複雑な推論では大型モデルに及ばない場面もあります。用途に合わせたモデルサイズの選択が大切です。
3. NEC|速度と国内ガバナンスを重視したcotomi
NECの生成AIcotomiは、日本語のベンチマークにおいて代表的な商用LLMと比べて約2倍の処理速度を実現したと紹介されています。第3世代のcotomi v3では、法律用語や行政特有の敬語表現への対応精度の向上に力を入れています。長年の官公庁・大企業向けシステム構築の経験があり、導入から運用までを一貫して相談しやすい点も魅力です。
- 強み:処理速度、国内でのガバナンス対応、SIの実績
- 向いている用途:大量の文書処理、官公庁・金融などの厳格な運用環境
4. 富士通|大量文書の一括処理に強いTakane
富士通のTakaneは、カナダのCohereと共同で開発した企業向けLLMです。Takane 32Bは320億パラメータ規模で、パブリックコメントのような大量文書の一括処理を想定した設計が特徴とされています。企業向けにセキュアな環境で使えることを重視しており、業務システムとの連携を前提とした提案が受けられます。
- 強み:大規模文書の要約・分類、企業向けセキュリティ設計
- 向いている用途:自治体の意見集約、社内ナレッジの整理、契約書・報告書の処理
5. ソフトバンク|エッジ利用も見据えたSarashina
ソフトバンクのSarashina2 miniは、軽量でエッジ環境にも展開しやすいことを狙ったモデルとして選定されています。日本の文化的な背景への適応も意識されており、通信事業者としてのネットワークや計算基盤とあわせた提案が期待できます。
- 強み:軽量設計、通信・計算基盤との組み合わせ
- 向いている用途:端末側で動かすAI、現場での即時応答
チェック:エッジ利用では、通信量の削減や応答の速さがメリットになります。工場や店舗などネット接続が不安定な現場での活用も選択肢に入ります。
6. Preferred Networks|独自設計のPLaMo
Preferred Networks(PFN)は、深層学習の研究開発で知られる企業で、自社設計のLLMPLaMoシリーズを展開しています。PLaMo 2.0 Primeが政府共通基盤の試験対象に選ばれており、ゼロから自社で設計・学習したモデルを持つ点が大きな特徴です。製造業やロボティクス、材料開発など、ものづくり領域での知見も豊富です。
- 強み:モデルの独自設計力、ものづくり領域でのAI活用実績
- 向いている用途:製造・研究開発分野、独自性の高いモデル活用
7. ELYZA|日本語特化のLLMと企業向け活用
東京大学の松尾研究室発のスタートアップであるELYZAは、日本語に特化したLLMと企業向けの生成AI活用に取り組んでいます。KDDIの出資を受けており、Llama-3.1-ELYZA-JP-70Bが政府共通基盤の試験対象に選ばれました。カスタマーサポート、コンテンツ作成、社内業務の効率化といった実務寄りの用途に強く、モデル開発と活用支援の両輪で進めている点が特徴です。
- 強み:日本語の自然さ、業務に近い活用提案
- 向いている用途:問い合わせ対応、文書作成、社内データを活用した業務支援
7社の特徴を一覧で比べる
| 企業 | 代表的なモデル・取り組み | 主な特徴 |
|---|---|---|
| Sakana AI | 日本向け基盤モデルの研究 | 研究力と大型の資金調達 |
| NTT | tsuzumi 2 | 軽量で日本語に強い |
| NEC | cotomi v3 | 処理速度と行政・法務表現への対応 |
| 富士通 | Takane 32B | 大量文書の一括処理 |
| ソフトバンク | Sarashina2 mini | 軽量でエッジ展開に向く |
| Preferred Networks | PLaMo 2.0 Prime | 独自設計とものづくり領域の知見 |
| ELYZA | Llama-3.1-ELYZA-JP-70B | 日本語特化と業務活用の支援 |
読み方のコツ:表の内容は「何ができるか」の目安です。実際の精度や費用は、業務内容やデータ量で大きく変わります。自社の実データで試せるかを、ぜひ相談時に聞いてみてください。
海外の主要AI開発企業との使い分け
国産モデルだけでなく、OpenAI、Anthropic、Googleといった海外の主要AI企業も、日本企業のAI活用で欠かせない存在です。2026年9月には、主要各社が相次いで新世代のモデルや更新を発表したと伝えられており、性能面での進化は引き続き急速です。OpenAIは企業導入に特化した専任組織を立ち上げ、現場に入り込んで実装を支えるエンジニアを配置する動きも見せています。
「どちらか一方」ではなく組み合わせて考える
実務では、国産と海外のモデルを用途ごとに使い分ける考え方が広がっています。
- 高度な推論や汎用的な作業:海外の大規模モデルが得意とする領域。コード生成、分析、長文の理解などで力を発揮します。
- 日本語の書類処理や国内運用が前提の業務:国産モデルが選ばれやすい領域。法令や行政文書、自社環境での運用などが該当します。
- コストや速度を重視する定型業務:軽量モデルを選ぶことで、費用を抑えつつ応答を速くできます。
選択のヒント:モデルは短期間で入れ替わっていきます。特定の1社に依存しすぎず、切り替えやすい設計にしておくと、将来の乗り換えもスムーズです。
AI開発企業の選び方|4つのチェックポイント
実際に開発や導入を依頼する場合に、確認しておきたいポイントをまとめます。
ポイント1:同じ業界・規模での実績があるか
AI開発では、業界ごとの法規制や慣習への理解が成果を左右します。同業種・同規模での開発実績があるかを確認しましょう。あわせて、プロジェクトマネージャーや担当エンジニアの経歴も見ておくと、体制のイメージがつかみやすくなります。
ポイント2:PoCから本番運用まで見てもらえるか
試作までは順調でも、本番運用で壁にぶつかるケースは少なくありません。PoCから本番運用、保守まで一貫して対応できるかは大切な基準です。クラウド環境、生成AI、データ基盤といった周辺領域の実績もチェックしましょう。
相談前のひと工夫:「何を自動化したいか」「今の業務にどれだけ時間がかかっているか」を事前に数字で整理しておくと、提案の質が上がり、見積もりも比べやすくなります。
ポイント3:データの扱いとセキュリティ
社内の機密情報や顧客データを扱う場合、データの保管場所、学習への利用有無、アクセス権限の管理を必ず確認します。国内のデータセンターで運用できるか、自社環境(オンプレミスや専用クラウド)に構築できるかも、国産モデルを選ぶ理由になりやすいポイントです。
ポイント4:費用の内訳と追加コスト
AI開発の費用は、初期開発費だけでなく、運用費、モデルの利用料、追加学習や改善の費用が発生します。見積もりの内訳が明確か、範囲外の作業がどう扱われるかを事前に確認しましょう。
| 確認項目 | 見るべき内容 |
|---|---|
| 実績 | 同業種・同規模の事例、担当者の経験 |
| 対応範囲 | PoC、本番運用、保守、改善までの一貫対応 |
| データの扱い | 保管場所、学習利用の有無、権限管理 |
| 費用 | 初期費用・運用費・追加費用の内訳 |
目的別|どのタイプの会社に相談すべきか
ここまでの内容を、よくある目的別に整理します。
社内の文書業務を効率化したい
議事録、報告書、契約書といった文書の要約・分類なら、日本語処理に強い国産モデルを提供する会社が候補になります。大量の文書をまとめて処理したい場合は、富士通やNECのような企業向けの提供体制を持つ会社が相談しやすいでしょう。
問い合わせ対応や接客を自動化したい
カスタマーサポートの自動化では、日本語の自然さと業務への組み込みやすさが重要です。ELYZAのように業務活用まで支援する会社や、コールセンター向けの実績を持つ受託開発会社が向いています。
成功のコツ:最初から全社展開を目指さず、一つの部署・一つの業務で小さく始めると、効果を測りやすく、社内の理解も得やすくなります。
自社専用のAIを作りたい・研究開発に活かしたい
製造業や材料開発など、専門性の高い領域では、モデルの独自設計力を持つ会社との連携が効果的です。Preferred Networksのように研究開発の知見が豊富な会社や、先端研究に強いSakana AIのような企業が選択肢になります。
現場の端末でAIを動かしたい
通信環境が限られる現場や、応答速度が重要な用途では、軽量モデルとエッジ展開に強い会社が適しています。ソフトバンクやNTTのように軽量モデルを提供する企業を検討してみましょう。
導入を成功させるための進め方
会社選びが終わったあとも、進め方次第で成果は変わります。押さえておきたい流れを5つのステップで示します。
- 課題の整理:どの業務に、どんな困りごとがあるかを具体的に書き出す
- 候補の絞り込み:目的に合うタイプの会社を3社程度に絞る
- 小規模な検証:実データを使ってPoCを行い、精度や使い勝手を確認する
- 運用設計:担当者、確認フロー、改善の頻度を決めておく
- 効果測定と拡大:削減できた時間やコストを数字で確認し、対象範囲を広げる
覚えておきたいこと:AIの出力には誤りが含まれることがあります。重要な判断や外部への公開物では、人が最終確認するフローを組み込んでおくと安心です。
よくある質問
国産モデルと海外モデル、どちらを選べばいいですか?
どちらが優れているかではなく、用途と運用条件で選ぶのが基本です。日本語の書類処理や国内での運用が前提なら国産、高度な推論や幅広い汎用タスクなら海外モデル、という組み合わせが現実的です。
中小企業でもAI開発会社に依頼できますか?
可能です。近年は、既存のモデルを活用して小規模から始められるプランを用意している会社も増えています。まずは特定の業務に絞った小さな検証から相談してみるのがおすすめです。
費用はどのくらいかかりますか?
内容によって大きく異なります。既存モデルを使った簡易なツールから、専用モデルの開発まで幅があるため、複数社から見積もりを取り、内訳を比べることが大切です。
導入後に会社を変えることはできますか?
設計次第です。モデルやサービスを切り替えやすい構成にしておけば、将来の乗り換えも容易になります。契約時にデータの持ち出しや引き継ぎの条件も確認しておきましょう。
※各社のモデル名・提供内容・資金調達額などは2026年9月時点で確認できた情報にもとづいています。最新の内容は各社の公式発表をご確認ください。(更新日:2026年9月29日)
まとめ
AI開発企業は、モデルそのものを開発する会社と、導入や運用を支援する会社に大きく分かれます。2026年は、デジタル庁による国産LLM7モデルの選定やSakana AIの大型資金調達など、国産AIを取り巻く環境が大きく前進した年です。選ぶときは、実績、対応範囲、データの扱い、費用の内訳という4つの視点を軸に、自社の目的に合ったタイプの会社を見極めていきましょう。
AI開発企業の選び方|国産7社の特徴と依頼前の確認ポイントをまとめました
国内の注目企業として、Sakana AI、NTT、NEC、富士通、ソフトバンク、Preferred Networks、ELYZAの7社を取り上げました。日本語処理や国内運用に強い国産モデルと、高度な推論に強い海外モデルは、用途に応じて組み合わせる考え方が現実的です。まずは一つの業務で小さく試し、効果を数字で確認しながら広げていくのが、失敗しにくい進め方です。



















人気記事