- Azure AI Document Intelligenceは文書のレイアウトや構造まで理解できるAI-OCRサービス
- 請求書・領収書・契約書などに対応した事前構築済みモデルと、独自帳票用のカスタム抽出モデルが用意されている
- 月500ページまで無料で使えるF0プランがあり、小規模な検証はコストゼロで始められる
- 2026年は表・行・セル単位の信頼度スコア表示や、検索可能PDFの生成など実務向けの改善が進んだ
- Azure Content Understandingとの役割分担を理解しておくと、導入時の選定がスムーズになる
Azure AI Document Intelligenceとは
Azure AI Document Intelligenceは、請求書や領収書、契約書、申込書といった紙・PDFの文書から、テキストや表、キー・バリューのペアなどを自動で抽出できるクラウドサービスです。もともとは「Form Recognizer」という名称で提供されていたサービスが発展したもので、単なる文字認識(OCR)にとどまらず、文書のレイアウトや章立て構造まで解析できる点が大きな特徴として評価されています。
従来型のOCRは「画像から文字列を取り出す」ことが主な役割でしたが、Document Intelligenceは表の行・列の関係や、見出しと本文の階層構造、フォームの項目名と入力値の対応関係までを読み取ります。そのため、バックオフィス業務でよくある「請求書の金額欄だけを自動転記したい」「注文書の品目一覧を表形式でシステムに取り込みたい」といったニーズに直接応えられるサービスとして位置づけられています。
処理結果はJSON形式で返ってくるため、Power AutomateやLogic Apps、業務システムのAPIなど、既存の仕組みと組み合わせやすい設計になっています。
主な機能を整理
Document Intelligenceが提供する機能は大きく4つに分けられます。用途に応じて組み合わせて使うのが基本的な考え方です。
Read(OCR)
印刷文字や手書き文字を抽出する基本機能です。多言語対応で、スキャンした紙文書やスマートフォン撮影の画像からもテキストを取得できます。最新のRead機能では、検索可能なPDF(テキストレイヤー付きPDF)を生成できるようになっており、社内のドキュメント管理システムで全文検索したい場合にも活用しやすくなっています。
Layout(レイアウト解析)
文書内の表、選択マーク(チェックボックス)、見出し、段落といった構造を認識する機能です。最新版では図表の検出精度が高まり、章・節といった階層構造も解析できるようになったことで、マニュアルや報告書のような長文ドキュメントの構造化にも向いています。
事前構築済みモデル
請求書、領収書、名刺、身分証明書、契約書、銀行明細、健康保険証など、代表的な帳票フォーマットに特化した学習済みモデルが用意されています。追加の学習を行わなくても、対応フォーマットであればすぐに項目抽出を試せる点が魅力です。
事前構築済みモデルの多くは米国の税務フォームなど海外の書式を前提に設計されているため、日本企業が独自に運用している注文書や社内帳票をそのまま高精度で読み取れるとは限りません。こうしたケースでは次に紹介するカスタム抽出モデルの活用が現実的な選択肢になります。
カスタム抽出モデル
自社独自のフォーマットを学習させて、専用の抽出モデルを作成できる機能です。サンプル帳票を数枚〜数十枚用意してラベル付けを行うことで、独自レイアウトの帳票からも高精度でデータを取り出せるようになります。最新版では表・行・セル単位まで信頼度スコアが表示されるようになり、抽出結果のどこを人手で確認すべきかを判断しやすくなりました。カスタム分類モデルを組み合わせれば、複数種類の帳票が混在していても自動で文書種別を振り分けることも可能です。
2026年の主なアップデート
Document Intelligenceは継続的にアップデートされているサービスで、直近では実務での使い勝手を高める改善がいくつか行われています。
- 図表検出と階層構造解析の強化:Layoutモデルが図表をより正確に検出し、文書内の章・節構造まで把握できるようになった
- 信頼度スコアの粒度向上:カスタム抽出モデルで表・行・セル単位の信頼度が確認できるようになり、品質チェックの工数を減らしやすくなった
- Microsoft Entra IDによる認証対応:Document Intelligence Studio側の認証方式が拡張され、組織のID管理と統合しやすくなった
- Read機能のコンテナ版がv4.0に更新:検索可能PDFの生成など、要望の多かった機能がコンテナ環境でも使えるようになった
- 税務フォーム関連モデルの更新:最新の税務フォームに対応し、複数フォームが1つのファイルにまとまっている場合でも1回のリクエストでまとめて抽出できるよう改善された
いずれも「精度をどう上げるか」だけでなく「実際の業務フローにどう組み込みやすくするか」という観点の改善が中心になっている点が、このサービスの成熟度を感じさせるポイントです。
Azure Content Understandingとの関係
Document Intelligenceは現在、Azure AI Foundryのツール群の中に位置づけられており、あわせて「Azure Content Understanding」という上位カテゴリのサービスも展開されています。名前が似ているため混同されやすいのですが、それぞれ得意分野が異なります。
| サービス | 得意なこと | 向いている用途 |
|---|---|---|
| Document Intelligence | 定型・準定型文書からの高精度・決定論的な抽出 | 請求書、契約書、申込書などの構造化データ化 |
| Content Understanding | テキスト・画像・音声・動画など多様な非構造化データの意味理解 | 生成AIを活用した高度な要約・分析・マルチモーダル処理 |
料金プランを整理
料金体系は「プランを1つ選ぶ」というより、呼び出す機能ごとに単価が決まっている従量課金型です。まずは無料枠で試し、必要に応じて有料利用に移行する流れが一般的です。
| プラン/機能 | 料金の目安 |
|---|---|
| 無料枠(F0) | 月500ページまで無料 |
| Read(OCR) | 1,000ページあたり約1.5ドル |
| Layout(レイアウト解析) | 1,000ページあたり約10ドル |
| 事前構築済みモデル | 1,000ページあたり約10ドル |
| カスタム抽出モデル | 1,000ページあたり約30ドル |
| モデルのトレーニング | 月10時間まで無料、以降は時間課金 |
処理量が多い場合は、年間の利用量をあらかじめコミットするプランを選ぶことで、標準の従量課金と比べて大幅に単価を下げられる場合があります。継続的に大量の帳票を処理する見込みがあるなら、導入前に見積もりを比較しておくのがおすすめです。
サブスクリプションのような月額固定費は発生せず、利用がなかった月の費用はゼロになる設計です。小規模なPoC(概念実証)から始めやすいのは、業務システムへの本格導入を検討するうえで扱いやすいポイントといえます。
活用シーンと導入のコツ
実際の業務では、次のような使われ方が多く見られます。
- メールで届いた請求書PDFを自動検出し、金額や取引先名を抽出して経理システムに転記する
- 紙の申込書をスキャンし、記入内容をデータベースへ自動登録する
- 契約書の重要項目(契約期間・金額・当事者名など)を一覧化して管理台帳を自動更新する
- 大量の紙資料を検索可能なPDFに変換し、社内ナレッジとして横断検索できるようにする
コードを書かずに業務フローへ組み込みたい場合は、Power AutomateやLogic Appsとの連携が有効な選択肢です。「特定のメールアドレスに届いた添付ファイルを検知→Document Intelligenceで抽出→スプレッドシートやデータベースに書き込み」という一連の流れを、開発者でなくても構築しやすくなります。
日本国内で導入を検討する場合は、自社の帳票フォーマットが事前構築済みモデルの対象外であることが多い点にあらかじめ留意しておくとよいでしょう。その場合はカスタム抽出モデルを作成する前提で、サンプル帳票の準備やラベル付け作業の工数も含めて計画を立てることが、スムーズな導入につながります。
使い方の基本ステップ
実際の処理フローはシンプルで、大きく3つのステップで完結します。
- ドキュメントを送信する:PDFや画像ファイルをAPI経由でアップロードする
- 処理完了を確認する:解析が完了するまで状態を確認する(数秒〜数十秒程度)
- 結果を取得する:JSON形式で抽出結果を受け取り、業務システムに反映する
Document Intelligence Studioと呼ばれる管理画面を使えば、コードを書かずにブラウザ上で文書をアップロードし、抽出結果をその場で確認することもできます。まずはStudio上でどの程度の精度が出るかを試してから、本番の業務フローに組み込むかどうかを判断する進め方が現実的です。
まとめ
Azure AI Document Intelligenceは、請求書や契約書といった業務文書から必要な情報を自動で構造化データとして取り出せるサービスです。月500ページまでの無料枠があるため、まずはコストをかけずに自社の帳票でどこまで精度が出るかを検証しやすいのが大きな魅力です。事前構築済みモデルで足りない部分はカスタム抽出モデルで補い、Power AutomateやLogic Appsと組み合わせることで、コードを最小限に抑えながら業務フローへの組み込みも可能になります。2026年のアップデートでは信頼度スコアの粒度向上や検索可能PDFの生成など、実務でそのまま役立つ改善が続いており、書類処理の自動化を検討するうえで引き続き有力な選択肢といえるでしょう。
Azure AI Document Intelligenceの使い方|料金プランと無料枠を整理をまとめました
本記事では、Azure AI Document Intelligenceの基本機能から2026年の最新アップデート、料金プランの内訳、そして業務での具体的な活用方法までを紹介しました。無料枠でまず試し、必要に応じてカスタムモデルや自動化フローへと段階的に広げていくことで、無理のない形で書類処理の自動化を進めやすくなります。自社の帳票フォーマットや業務フローに合わせて、事前構築済みモデルとカスタム抽出モデルのどちらが適しているかを見極めながら導入を検討してみてください。



















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