この記事の要点
- Vertex AIは、Google Cloudが提供する機械学習・生成AIの統合プラットフォーム
- Model Gardenでは200を超えるモデルを同じ基盤から選べる(GeminiのほかClaudeやLlamaなども対象)
- 2026年4月のイベントで、Gemini Enterprise Agent Platformへと発展・統合された
- 料金は従量課金制で、初めての利用者には90日間・300ドル分の無料クレジットが用意されている
- 個人の試用はAI Studio、業務システムへの組み込みはVertex AI系という使い分けが基本
Vertex AIとは?Googleの生成AI開発基盤
Vertex AIは、Google Cloud上で機械学習モデルの開発・学習・デプロイ・運用までを一気通貫で行えるプラットフォームです。2023年ごろから生成AIの機能が急速に拡充され、現在は「AIアプリやAIエージェントを業務で動かすための土台」という位置づけで語られることが多くなっています。
ChatGPTやGeminiアプリのように「画面を開いて話しかけるAI」ではなく、企業や開発者が自社のサービスにAIを組み込むための基盤である点が最大の特徴です。APIでモデルを呼び出すだけでなく、データの管理、モデルの調整、評価、監視、アクセス制御といった本番運用に必要な機能がひとまとまりになっています。
ひとことで言うと:Vertex AIは「AIを試す場所」から「AIを業務で安全に動かす場所」までをカバーするGoogle Cloudの総合窓口です。
従来の機械学習と生成AIの両方に対応
もともとVertex AIは、表形式データの予測、画像分類、需要予測といった従来型の機械学習のために作られた基盤です。そこへGeminiをはじめとする生成AIモデルが加わったことで、文章生成・要約・画像理解・コード生成なども同じ環境で扱えるようになりました。予測モデルと生成AIを組み合わせた仕組みも、同一プロジェクト内で構築できます。
2026年の大きな変化:Gemini Enterprise Agent Platformへの発展
2026年4月、Google Cloudは年次イベントでGemini Enterprise Agent Platformを発表しました。これはVertex AIの「モデル選択・モデル構築・エージェント構築」の機能を引き継ぎつつ、エージェントのライフサイクル全体(構築・スケール・ガバナンス・最適化)を扱えるようにした統合プラットフォームです。あわせて、従来のAgentspaceも統合された「Gemini Enterprise」として整理されました。
そのため、最新の公式ドキュメントやプロダクトページでは、Vertex AIが「Gemini Enterprise Agent Platform(旧Vertex AI)」と併記される場面が増えています。名称は変わっても、Vertex AIで培われた機能はそのまま土台として使えると理解しておくと混乱しません。
名称の読み替えメモ:検索や資料で「Vertex AI」「Vertex AI Agent Builder」「Gemini Enterprise Agent Platform」が混在していても、同じ系譜のサービスとして読み進めて問題ありません。ただし画面名やAPI名は移行途中の場合があるため、利用時は最新の公式ドキュメントで確認するのが安心です。
エージェント向けの新しい要素
発表内容では、次のような要素が注目されています。
- ADK(Agent Development Kit):エージェント開発用のキット。複数の言語で安定版が提供されている
- Agent Engine:構築したエージェントを本番環境で動かす管理サービス。セッション管理やMemory Bank(長期記憶)を備える
- Agent Garden:カスタマーサポートやデータ分析など、用途別の雛形エージェント集
- A2Aプロトコル:異なるエージェント同士が連携するための共通ルール
- マネージドMCPサーバー:既存のAPIをエージェントから使いやすくする仕組み
Vertex AIの主な機能を整理
機能は多岐にわたりますが、読者が押さえておきたい柱は次の5つです。
| 機能 | できること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Model Garden | 200超のモデルから選んで利用・デプロイ | 用途に合うモデルを比べたいとき |
| Vertex AI Studio | プロンプトの試作・調整をブラウザで行う | 開発前の検証・プロトタイプ |
| Agent Builder | 検索・対話・業務自動化エージェントの構築 | 社内ナレッジ検索、問い合わせ対応 |
| カスタム学習・チューニング | 自社データでモデルを調整・学習 | 独自ドメインの精度を高めたいとき |
| MLOps・評価・監視 | パイプライン、評価、運用監視 | 品質を保ったまま長期運用したいとき |
Model Garden:モデルを選べる強み
Model Gardenには、GoogleのGeminiやGemmaのほか、Anthropic社のClaude、Llamaなどのオープンモデルも並びます。1つの契約・1つの管理画面で複数のモデルを切り替えられるため、「文章要約はこのモデル、コード生成は別のモデル」といった使い分けや、精度・コストの比較がやりやすくなります。
選び方のコツ:最初から高性能モデル1本に固定せず、軽量モデルと比べて品質差が業務に影響するかを小さく検証してから決めると、コストを抑えやすくなります。
Vertex AI Studio:ブラウザで試せる開発環境
コードを書く前に、プロンプトや出力の傾向を画面上で試せる環境です。温度などのパラメータを調整しながら結果を比べ、良い設定をそのままコードとして書き出せます。エンジニアだけでなく、企画担当者が挙動を確認する用途にも向いています。
Agent Builder:エージェントを組み立てる
Agent Builderは、最新のGeminiを頭脳にして、指示に応じて手順を計画し、ツールを使いながら実行するAIエージェントを作るための機能群です。たとえば「新商品の動向を調べてレポートにまとめ、チャットツールへ送る」といった、複数の工程にまたがる作業を任せる構成が想定されています。
社内文書の検索を自然な対話で行えるようにしたり、問い合わせ窓口を自動化したりといった用途では、自社データに根ざした回答(グラウンディング)を行える点が実務で重宝されています。
ADKとAgent Engineで「試作から本番」へ
エージェントは試作までは簡単でも、本番運用でつまずきがちです。ADKでコンテキスト管理を含めた開発を進め、ワンクリック相当のデプロイでAgent Engineに載せ、観測・評価・エージェントごとのID管理やセキュリティ対策まで一貫して扱える流れが強化されています。
ポイント:本番運用で重要になるのは「何をしたエージェントか追跡できること」と「権限を絞れること」です。エージェント単位でIDを持たせる考え方は、社内展開時の安心材料になります。
Vertex AIの料金の考え方
Vertex AIは従量課金制です。大きく分けると、次の2軸で費用が決まります。
- 生成AIモデルの利用料:入力・出力のトークン量(文字量の目安)に応じた課金
- コンピューティング資源の料金:学習やデプロイ、エンドポイント稼働に使う計算リソースの課金
Google Cloud、Google Maps Platform、Firebaseを有料で使った経験がない場合は、90日間・300ドル分の無料クレジットを使って試せます。まずは少量のトークンで検証し、月額の見通しを立ててから本格利用に進むのが定石です。
費用を抑える工夫:軽量モデルの採用、プロンプトの簡潔化、同じ質問結果のキャッシュ、バッチ処理の活用などが定番です。予算アラートも初日に設定しておくと安心です。
料金が変わりやすい点に注意
モデルごとの単価や無料枠は更新されることがあります。具体的な金額は利用前に公式の料金ページで確認してください。この記事では、金額そのものより「どこに費用が発生するか」の構造を押さえることを目的にしています。
AI Studio・Geminiアプリとの使い分け
Googleには似た名前のサービスが複数あり、混同されやすいところです。役割を整理すると次の通りです。
| サービス | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| Geminiアプリ | 一般ユーザー | 対話型のAIアシスタント。開発不要ですぐ使える |
| Google AI Studio | 個人開発者・試作 | APIキーで手軽にGeminiを試せる |
| Vertex AI系(Agent Platform) | 企業・本番運用 | 権限管理、データ保護、監視、SLAなど運用機能が充実 |
目安としては、個人のアイデア検証ならAI Studio、社内データを扱う本番システムならVertex AI系を選ぶ流れです。AI Studioで作った試作を、あとからVertex AI側へ移して運用に乗せるケースもよく見られます。
迷ったら:扱うデータに機密情報が含まれるか、社内の認証基盤と連携が必要か。どちらかに当てはまるなら、最初からVertex AI系を検討すると手戻りが少なくなります。
Vertex AIの活用シーン
社内ナレッジ検索・問い合わせ対応
マニュアルや規程、議事録などを横断して質問に答える仕組みです。検索と生成を組み合わせ、根拠となる文書を示しながら回答できる構成にすると、現場での信頼が得やすくなります。
ドキュメント処理・データ分析
請求書や契約書などの文書から項目を抽出したり、大量のテキストを分類・要約したりする用途です。従来型の機械学習と生成AIを併用すれば、定型処理と柔軟な読み取りを組み合わせられます。
マルチエージェントによる業務自動化
調査担当、集計担当、報告担当といった複数のエージェントを連携させ、業務の流れを自動化する取り組みも進んでいます。A2Aのような共通ルールにより、他社製サービスのエージェントとも連携しやすくなることが期待されています。パートナー各社が提供するエージェントを組み込める点も、導入の早さにつながります。
ヒント:最初から大規模な自動化を狙わず、「1つの定型業務を1つのエージェントに任せる」ところから始めると、効果測定と改善がしやすくなります。
導入までの基本ステップ
- Google Cloudアカウントとプロジェクトを作成し、無料クレジットの適用条件を確認する
- 課金アラートを設定して、想定外の費用を防ぐ
- Vertex AI Studioで小さな検証を行い、モデルとプロンプトの相性を見る
- 必要に応じてAgent BuilderやADKでエージェント化する
- 権限(IAM)とデータの扱いを整理し、本番環境へ展開する
- 評価・監視の指標を決め、継続的に改善する
意外な盲点:技術面より先に、「どの業務を、どの指標で改善するか」を決めておくことが成功の分かれ目になります。目標が曖昧だと、検証が終わらないまま費用だけがかさむことがあります。
これから使う人が押さえたいチェックポイント
- 名称の変遷:Vertex AIからGemini Enterprise Agent Platformへ発展している点を理解しておく
- モデルの選択肢:GeminiだけでなくClaudeなども選べるため、用途別に比較する
- コスト管理:トークン量と計算資源の2軸で見積もる
- セキュリティ:データの取り扱い、権限、エージェントのID管理を事前に設計する
- 運用設計:評価と監視の仕組みを最初から組み込む
確認日:2026年9月19日時点の情報をもとにしています。機能名・料金・提供範囲は更新される可能性があるため、利用前に公式ページで最新内容をご確認ください。
まとめ
Vertex AIは、Google Cloudが提供する機械学習と生成AIの統合基盤です。Model Gardenで200を超えるモデルを選べること、Agent BuilderやAgent Engineでエージェントを試作から本番運用まで進められること、従量課金で小さく始められることが大きな魅力です。2026年4月にはGemini Enterprise Agent Platformとして発展し、エージェント時代に向けた管理・連携機能がいっそう充実しました。
Vertex AIの機能と料金を整理|Gemini Enterprise Agent Platformとの関係
個人の試用ならAI Studio、業務システムへの組み込みや社内展開ならVertex AI系という使い分けが基本です。まずは無料クレジットを活用して小さな検証から始め、料金の構造と運用設計を押さえながら、自社の課題に合う形で少しずつ広げていくのがおすすめです。


















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